前回までのお話
財務DDの説明を通して、これからM&Aに取り組もうとする女性たちにアドバイスを送ろうという試み。今回は2つのチェック項目を説明し、それぞれについて留意すべき事項を書いていく。
■財務DDの手続と留意事項■
あなたの投資ノートに、対象案件がいくつかたまってきたら、その対象案件たちに様々なチェックを行うことでしょう。そして、段階を経て(最初のチェックでもいいが)、財務DDを行います。チェック項目は一般的に、2つあり、そして、この2つは相互に強く関連していると考えられています。具体的に2つの項目を挙げますと、
1.資産はどれくらいありますか?(ストックのはなし)
2.年収いくらですか?(フローのはなし)
とても重要な質問で、会計的に言えば、ストックとフローの視点を網羅しているため、非常に秀逸な構造です。しかし、双方ともに、重要な視点が抜け落ちてしまっているため、これから財務DDを行う女性には以下の留意事項を参考にしていただきたいと思います。
1.資産はどれくらいありますか?
実際に女性が行うプロセスとしては、直接的・間接的なヒアリングを行い、その後、不動産・動産問わず、実際に目で見てチェックを入れることになると思います。
例えば、「ご飯を作ってあげる」と言って、対象案件の不動産チェックを行うことができるし、「ドライブに連れて行って」ということで、動産の代表格である車両チェックを行うこともできます。このあたりであれば、どの女性も行うでしょう。しかし、盲点があります。
資産と同じ、ストックの話で、その全く逆の話。負債のチェックが漏れているのです。これは非常に由々しき自体です。
負債のチェックは主に、全ての負債が漏れなく認識されているかという視点で行われます。言い換えれば、「負債の網羅性」という言葉になります。確かに、会計監査・DDともに、この「負債の網羅性」を証明するのは非常にやっかいです。プロフェッショナルな先輩たちも、そうコメントを残すくらいですから。
なぜ、負債(の網羅性)を確認する理由は、大きく2つあって、ひとつは、資産と違って、実物を確認することもできないこと。もうひとつは、対象案件が負債の存在を自分から言わないことでしょう。特に後者は、資産があれば自慢したいと思いますが、負債の額を自慢したいとも思わないですし、隠すかもしれません。隠さないまでも、少なくとも自分からは言わないですね。
具体的な対処としては、それを確認するヒアリングを行う、対象案件が取引している銀行に対して問い合わせる。または、資産の量と対象案件が営んでいるビジネスとのバランスから勘案して、負債の存在を推測することです。
確かに難しい作業ですが、負債チェックを完全に怠ってしまうよりは、良いと思います。
2.年収いくらですか?
「資産」より、「年収」の方が話題に上りやすいです。メディアで素人さんが露出する際に、テロップで出るのは大抵、資産額より、年収額で、これは、対象案件がどれくらい自由に使えるキャッシュをまわしているのかという視点からも、昨今の企業経営のキーワードとなるキャッシュフロー経営の視点とも整合しています。
しかし、ここでも留意事項があります。あなたのこの確認事項における目的は、「年収がいくらか?」ではないという点です。では、本当の目的はなんでしょうか?
答えを書いてしまうと、「M&A後、どれだけ自分自身が自由に使えるお金を得ることができるのか?」という問いが、あなたにはあるはずです。それにも関わらず、年収を聞いて、そのプロセスを終えるのはいかがなものでしょうか。
重要なことなので、もう一度書きますが、確かめるべきは年収金額ではなく、対象案件の年収金額のうち、あなたがどれだけ自由に使えるか、です。
そう質問を変えれば、確認すべき事項は少し明確になります。年収と言っている金額の多くは、親会社(両親)や、金融機関(消費者金融)から調達しているもので、対象会社が価値創造して得ているものではないかもしれないし、また、年収金額のうち、もしかしたら、負債返済に充てている割合が通常よりも高い(負債の網羅性チェック)かもしれません。
こういう視点を財務DDプロセスに加えるだけで、これからM&Aを行おうとしている女性の未来は明るくなると思います。
■あとがき■
最後に、ひとつ。
M&Aを行う上で、大きく取り上げられるのは、設立24年説や、30年説です。これは、あなたが生まれてから、M&Aを行うまでの適切な年数を一般的に語ってくれているものです。
この一般説は、影響が大きいので、あるときは、心惑わされ、M&Aを行わなくてはならない。と強迫観念にも似た感情を抱くかもしれません。そんなときは、「why M&A?」に立ち返ってください。M&Aには、法的な期限はないはずですし、追い立てられた勘定(失敬、感情)で、M&Aを行っても、その後のオペレーションに支障をきたすのは自明です。
わからなくなったら、「why M&A?」。
上記で述べた財務DDのテクニックよりも、はるかに大切な問いです。
っぽいかな?笑。